下呂温泉(げろおんせん)は岐阜県中東部、飛騨(ひだ)地域の最南部に位置する温泉です。江戸時代の儒学者林羅山(はやしらざん)によって、兵庫県有馬温泉(ありまおんせん)、群馬県草津温泉(くさつおんせん)とともに“日本三名泉”のひとつとして讃えられ、今なお東海地方一の人気を誇っています。
下呂温泉
住所:岐阜県下呂市
問い合わせ先:下呂たび(下呂市公式観光サイト)
電話番号:0576-24-2222
アクセス:
公共交通機関/JR高山本線下呂駅下車
車/中央自動車道中津川ICから国道257号線で約1時間ほか
URL:hhttps://www.city.gero.lg.jp/site/kanko/
温泉消滅の危機を1羽の白鷺が救ってくれた
下呂温泉の歴史は、1,000年ほど前に下呂市街から西にそびえる湯ヶ峰山(標高1,067m)山頂付近に温泉が発見されたことに始まります。源泉は、後に湯ヶ峰山の噴火で消失してしまいましたが、麓の益田川(ますだがわ=飛騨川[ひだがわ])で温泉が発見され、現在の温泉街ができあがりました。
益田川に湧いた温泉には、伝説が残っています。
湯ヶ峰山の噴火で止まってしまった温泉を悲しんでいた住民が、益田川で何日も羽を休めている1羽の白鷺を見つけ近づいてみると、川から温泉が湧いていたのです。
下呂温泉は江戸時代頃まで、もともと湯ヶ峰山に源泉があったことから“湯島温泉(ゆのしまおんせん)”といわれていて、林羅山が書いた三名泉の紹介でも“飛州(ひしゅう、飛騨国[ひだのくに]の別称)湯島”となっています。今でも湯ヶ峰山には当時の源泉跡が残っています。
昭和初期に人気温泉地となった下呂温泉
下呂温泉の歴史は順風満帆だったわけではありません。源泉が益田川の河原にあったためたびたび洪水の被害にあい、明治時代には温泉がほぼ出なくなってしまったのです。そのため明治期から昭和初期にかけての下呂温泉は、小さな湯治宿がいくつかあるだけで、地域住民のみが知る寂しい温泉地でした。
昭和時代になり、国鉄高山線(現JR西日本高山本線)の下呂駅が誕生、下呂に良い温泉があることを知っていた名古屋市の実業家が、新しい温泉施設を建設するために温泉採掘権を取得して、新たな源泉を発見しました。
1931年(昭和6年)に今でいうクアハウス的な温泉施設が開業します。それが大当たりをして、名古屋方面からの観光客が大挙して訪れるようになり、その後何軒もの温泉旅館が開業し、東海圏最大の温泉地となったのです。
1931年(昭和6年)に誕生したのが「湯之島館」で、1932年(昭和7年)には「水明館」が創立されました。「湯之島館」と「水明館」は今でも下呂温泉を代表する温泉宿として知られていますが、特に「湯之島館」は現在でも当時そのままの姿を残す温泉旅館(国の登録有形文化財)として、下呂温泉のシンボル的存在となっています。
「下呂温泉」の下呂は所在地の名称(現下呂市)ですが、もともとは旧益田(ますだ)街道(飛騨街道)の宿場町だった“下留(しもとまり)”が音読みで“げる”から『げろ』へ変わったといわれています。下呂より北には“中呂”“上呂”もあります。ちなみに“呂”という字はカタカナの“ロ”の基になった文字です。
囲いが一切ない河原の露天風呂「噴泉池」がお出迎え
「下呂温泉」は川幅の広い益田川(正式名称は飛騨川)の両岸に温泉宿やそのほかの施設が並んで建っています。「水明館」が川沿いに下呂温泉一の偉容を誇り、「湯之島館」は木々に囲まれた少し崖を登ったところにあります。白鷺が温泉に浸かっていたところに発見されたとされる薬師如来像(やくしにょらいぞう)を祀った「温泉寺」は、源泉が見つかったといわれる場所から階段を上ったところに鎮座しています。
「下呂温泉」の温泉旅館は38軒(下呂温泉旅館協同組合加盟)で、益田川の河原にある開放的な「噴泉池」や「白鷺の湯」などの日帰り入浴施設も充実しています。
「噴泉池」は広い河原に石組みしただけで囲いが一切ない温泉で、無料ですが混浴です。そのため、水着着用が義務づけられています(裸では入れません)。毎日午前8時から午前9時に間は清掃時間です。温泉をすべて抜いて清掃するので、湯船に温泉が満タンになるのに7時間ほどかかります。
白鷺が見つけたとされる源泉の地に建つ「白鷺の湯」は、1926年(大正15年)から続く大衆浴場で、館外には無料の足湯「ビーナスの足湯」があります。
下呂温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で統一されています。というのも下呂に湧き出す源泉は1か所に集められ、組合により各施設に分湯されているからです。管理施設から送り出される湯温は55℃で、各施設で適温に調整しています。
効能はリウマチ、運動機能障害、神経症、神経麻痺、病後回復、疲労回復などで、お肌をスベスベにする美肌の湯として特に女性に人気です。
下呂温泉の日帰り入浴施設
噴泉池
益田川(飛騨川)の河原
温泉:源泉かけ流し
利用時間:清掃時間以外可(ただし湯船が満タン状態は16:00以降)
清掃時間:8:00~9:00(毎日)
入浴料:無料
白鷺の湯
電話番号:0576-25-2462
営業時間:10:00~21:00(最終受付20:15)
定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)
入浴料:おとな 400円、小学生 140円、幼児 70円
幸乃湯(公衆浴場)
電話番号:0576-25-2157
営業時間:10:00~22:15(最終受付21:45)
定休日:火曜日(祝日の場合は営業)
入浴料:おとな 400円、小学生 150円、幼児 70円
クアガーデン露天風呂
電話番号:0576-24-1182
営業時間:10:00~21:00(最終受付20:15)
定休日:木曜日(祝日の場合は翌日)
入浴料:おとな 700円、小学生 400円、幼児 200円
合掌造り家屋を移築した「下呂温泉合掌村」
「下呂温泉」には温泉施設以外にも楽しい観光スポットが揃っています。
「下呂温泉合掌村」は、白川郷など近隣から移築した合掌造り家屋が10棟ほど並んでいる観光施設です。見どころは国の重要文化財に指定されている『旧大戸家住宅』で、白川郷近郊のダム予定地に建っていたものを解体移築したものです。間口約25m、奥行約12mの大きな合奏造りの家で、農業のかたわら養蚕を営む当時の生活がよく分かります。
敷地内には、合掌造りの民俗資料館(旧岩崎家・国の登録有形文化財)や、岐阜生まれで全国を托鉢(たくはつ)しながら12万体にも及ぶ素朴な木彫りの仏像を彫ったといわれる僧侶円空の作品37体を展示する円空館、体験工房、食事処、カフェ、足湯などがあります。
下呂温泉合掌村
住所:岐阜県下呂市森2369
電話番号:0576-25-2239
営業時間:8:30~17:00(最終受付16:30)
年中無休
入村料:おとな(高校生以上) 800円、子ども(小中学生) 400円
URL:http://www.gero-gassho.jp/
新鮮な食材とお土産が揃う「いでゆ朝市」
「いでゆ朝市」は下呂温泉合掌村」の入口広場で開催される朝市です。開催期間(3月初旬~12月頃)は毎日地元で採れた野菜や果物、山菜、キノコ、漬物などのほか、土産物や骨董品なども並びます。宿をチェックアウトした後立ち寄るのに楽しいマーケットです。
いでゆ朝市
開催場所:「下呂温泉合掌村」入口広場
開催期間:3月上旬頃~12月頃まで(冬季休業)
開催時間:8:00~12:00
休業日:開催期間中は無休
入場料:無料
URL:https://www.city.gero.lg.jp/site/kanko/1462.html
雪舟作の傑作『八方にらみの達磨』が展示される「禅昌寺」
「禅昌寺(ぜんしょうじ)」は下呂温泉から約5km北の下呂市萩原町中呂にある臨済宗(りんざいしゅう)の古刹(こさつ)です。ここには室町時代の僧侶で水墨画の名匠雪舟(せっしゅう)の作になる『八方にらみの達磨』があります。このだるまさん、平面に描かれているのに、どこから見ても自分の方をにらんでいるのです。その迫力のある目に圧倒されます。
「禅昌寺」の庭園は、『萬歳洞(ばんざいどう)』と呼ばれ、岐阜県指定文化財に指定されている江戸時代初期の茶人金森宗和(かなもりそうわ=宗和流茶道[そうわりゅうさどう]の創始者)が造った名園です。
禅昌寺
住所:岐阜県下呂市萩原町中呂1089
電話番号:0576-52-1353
拝観料:おとな 300円、中学生以下無料
アクセス:
鉄道/JR高山本線禅昌寺駅から徒歩約3分
車/下呂温泉から国道257号線で約5km