奥飛騨温泉郷は長野県と岐阜県の県境から富山県方面に連なる北アルプス(飛騨山脈)の西側、穂高連峰(ほたかれんぽう・最高峰奥穂高岳[標高3,190m])、焼岳(やけだけ・標高2,455m)のふもと、岐阜県高山市の東部標高800m~1,250mに位置する温泉郷です。
奥飛騨温泉郷には「平湯温泉」「新平湯温泉」「福地温泉」「栃尾温泉」「新穂高温泉」があり全国の温泉湧出量ベスト3に入るほど湯量豊富、しかも、自然豊かで観光スポットも多く、山あいながら交通の便もいいため年間600万人もの観光客が訪れています。
奥飛騨温泉郷へは高山市から奥飛騨温泉郷の玄関口、「平湯温泉」へ国道158号線で1時間ほど、長野県側からは長野県松本市から国道158号線安房(あぼう)トンネルを経由して約1時間で到着します。
「平湯温泉」からは国道471号、県道475道などを利用して「新平湯温泉」「福地温泉」「栃尾温泉」「新穂高温泉」へ行くことができます。道路は多少山道がありますが、車幅は確保されていて運転は楽です。路線バスも高山・松本などから出ています。
また、富山県方面からも国道471号線または国道41号線を使って奥飛騨温泉郷へ行くことができます。路線バスも富山駅、富山空港から1日数本ですが出ています。
街道から外れた静かな温泉郷「福地温泉」
「福地温泉(ふくじおんせん)」は、奥飛騨温泉郷の玄関口、「平湯温泉」から国道471号線(奥飛騨湯の花街道)を「新平湯温泉」方面へ下り、温泉手前を左折した静かな山あいにあります。標高は950m~1000mで、昔の庄屋宅など移築したりした10軒ほどのこぢんまりした低層の田舎風木造宿が並んでいます。
宿は民宿から露天風呂付き客室を備える高級宿まで、温泉街全体が統一感にあふれています。
源泉は自噴する97℃の共同源泉をはじめ、一部の宿では源泉を所有していて、湯量豊富で源泉かけ流しが基本です。泉質は単純温泉が多いですが、一部にはナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉や単純硫黄泉のところもあります。詳細は施設に確認してください。
福地温泉
問い合わせ先:福地温泉観光協会
URL:https://www.fukujionsen.com/
昔懐かしい古民家でくつろげる「昔ばなしの里」
「昔ばなしの里」は、「福地温泉」にある古民家を移築した施設で、日帰り温泉「石動(いするぎ)の湯」の休憩所として利用しています。建物内は、囲炉裏や調度品など昔話に出てくるような懐かしい雰囲気をそのまま残していて、火が入った囲炉裏の周りで五平餅や高山ラーメンなどが味わえます。
昔ばなしの里
電話番号:0578-89-2793
営業時間:12:00~16:00
休館日:水曜日、1月1日
ほのかな硫黄の香りがする「石動の湯」
「石動の湯」は、「昔ばなしの里」に併設されている日帰り入浴施設です。湯船は男女別に分かれていて、おのおの内湯と露天風呂があります。泉質は単純硫黄泉で、少し硫黄の香りがする無色透明な温泉です。
石動の湯
電話番号:0578-89-2793
営業時間:12:00~16:00
休館日:水曜日、1月1日
入浴料:300円(おとな・こども共通)
※冬季/露天風呂は休止
4億年前の化石!「福地化石館」
「昔ばなしの里」併設されている「福地化石館」は、国の天然記念物に指定されている“福地の化石産地”内で出土した岐阜県指定の文化財をはじめ、数百点の化石を展示しています。福地は標高1000m近い地にありますが、約4億年前は海底でした。展示されている化石はその海で生活していた生き物で、その様子はジオラマで再現されています。
昔ばなしの里 福地化石館
電話番号:0578-89-2793
営業時間:12:00~16:00
休館日:水曜日、1月1日
URL:https://www.kakurean.com/html/kaseki.htm
温泉付きオートキャンプ場がある「栃尾温泉」
「栃尾温泉(とちおおんせん)」は「平湯温泉」から国道471号線(奥飛騨湯の花街道)を「新平湯温泉」方面に下り、温泉街を過ぎると現れる高原川(たかはらがわ)と蒲田川(かまたがわ)の合流付近に湧く温泉です。富山県側からは最初に現れる奥飛騨温泉郷の温泉地で、「新穂高温泉」への玄関口になっています。
宿泊施設は10軒ほどで、こぢんまりとした旅館、民宿、ロッジ風宿、オートキャンプ場などがあります。源泉は単純温泉で、無色透明なアルカリ性の温泉です。
開放館いっぱいの共同浴場「荒神の湯」
「荒神の湯(こうじんのゆ)」は、蒲田川の河原にある共同浴場で、男女別の露天風呂と脱衣場があります。露天風呂はかなり広く、岩風呂がおのおの2か所あります。男女別に分ける仕切りはしっかり作られていますが、その他の方面はかなり開放的です。特に男性用は全く仕切りがありません。源泉は単純温泉です。
荒神の湯
電話番号:0578-89-2614
営業時間:8:00~22:00
※月水金は清掃のため12:00から営業
定休日:無休
入浴料:寸志(200円程度)
夏にはホタルの観賞ができる足湯「蛍の湯」
「蛍の湯」は、「新穂高温泉」方面に向かう県道沿いにある屋根付きの足湯です。夏はすぐそばを流れる川にホタルが飛び交います。ホタル観賞に最高の特等足湯です。
足湯「蛍の湯」
電話番号:0578-89-2614
営業時間:24時間(清掃時間のみ不可)
定休日:不定休
入浴料:寸志(100円程度)
温泉付きオートキャンプ場を併設した道の駅「上宝」
「道の駅 奥飛騨温泉郷上宝(かみたから)は、「栃尾温泉」から国道471号線を少し富山方面に向かった国道沿いにある奥飛騨温泉郷唯一の道の駅です。休憩所、物産館、レストランなどがあり、ドライブには重宝します。
敷地内にオートキャンプ場「奥飛騨温泉オートキャンプ場」があります。オートキャンプ場には170を超えるキャンプサイト(電源使用可サイト71)があり、天然温泉の露天風呂(男女別)が無料で利用できます。
道の駅奥飛騨温泉郷上宝
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷田頃家11-1
電話番号:0578-89-3746
営業時間:
4月~10月/9:00~17:00
11月~3月/9:00~16:30
※トイレ等は24時間使用可
URL:https://www.cbr.mlit.go.jp/michinoeki/gifu/gifu08.html
奥飛騨温泉オートキャンプ場
電話番号:0578-89-3410
入場料:おとな(中学生以上)500円、こども(3歳以上小学生以下)300円
サイト使用料:ホームページ参照
URL:https://www.okuhida-camp.com/
奥飛騨温泉郷最奥の「新穂高温泉」
「新穂高温泉」は、穂高連峰西穂高岳(標高2,909m)の裾野に位置する温泉で、蒲田川沿いの神坂(かんさか)地区と、蒲田川河畔から少し登ったところにある中尾高原地区の2か所に分かれています。
「新穂高温泉」は、江戸時代以前から鎌田川沿いにあり、北アルプスへの登山客で賑わっていた『蒲田温泉』(1920年に発生した土砂崩れで消失)の流れをくむ温泉です。
新穂高エリアは、古くから人気になっていた長野県側の上高地(かみこうち)や乗鞍(のりくら)に比べ、“裏穂高”と呼ばれ地味な印象でした。そこで名付けられたのが“新穂高”という名称です。そして1970年(昭和45年)に「新穂高ロープウェイ」が開業し、人気観光地の仲間入りをしたのです。
北アルプス山麓のいちばん奥まったところが「新穂高温泉」
「新穂高温泉」へは「栃尾温泉」で国道471号線から分かれて蒲田川に沿って県道(通称)星空街道)を西穂高岳方面へ上っていきます。蒲田川沿いには約4Kmに渡ってホテル・旅館や野趣あふれる日帰り入浴施設「新穂高の湯」などが点在しています。星空街道の終点には「新穂高ロープウェイ」があります。
中尾高原は、穂高連峰、焼岳、槍ヶ岳などの北アルプスの山並みに抱かれた大自然の魅力にあふれた高原で、「新穂高の湯」付近の“中尾温泉入り口”から坂を登っていきます。高原には良質な温泉が湧き、“中尾温泉”とも呼ばれています。
「新穂高温泉」の宿泊施設は蒲田川沿いに10軒あまり、中尾温泉に約20軒あります。
蒲田川沿いの宿は、比較的大きなホテル・旅館があり、中尾温泉にはこぢんまりとし旅館やペンションなどが多くなっています。温泉の湯量は豊富で、蒲田川地区、中尾地区とも露天風呂のある源泉かけ流しの施設が多いのが特徴です。
泉質は蒲田川地区が単純温泉、炭酸水素温泉、単純硫黄泉などで、鎌田川沿いに湧く共同の源泉と自家源泉を併用している施設が多くなっています。中尾地区はナトリウム・塩化物泉や単純温泉で、中尾高原に湧出する源泉を共同で利用しています。
新穂高温泉
問い合わせ:奥飛騨温泉郷観光協会
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高
電話番号:0578-89-2614
URL:https://shinhotaka.com/place/486/
中尾高原
問い合わせ先:中尾観光組合
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷中尾
URL:https://nakao-onsen.com/nakaokougen/
河原に岩を組んだだけの名物「新穂高の湯」
「新穂高の湯」は、鎌田川の河原に湧く温泉で大岩で囲んだ湯船があります。一応脱衣所は男女別にありますが、湯船はひとつ、男女混浴です。川を渡る星空街道の橋からは丸見えですが、それを覚悟で楽しんでください。水着OK。
新穂高の湯
電話番号:0578-89-2458
営業期間:4月下旬~10月いっぱい(予定)
営業時間:8:00~18:00
定休日:営業期間は基本無休。ただし川が増水した場合など臨時休業)
入浴料:300円程度(清掃協力金)
URL:https://shinhotaka.com/place/486/
奥飛騨温泉郷第1の観光スポット「新穂高ロープウェイ」
「新穂高ロープウェイ」は新穂高温泉駅から西穂高岳の中腹、2,156m地点の千石平(せんごくだいら)にある西穂高口駅までの間を結ぶロープウェイ。全長3,171m、高低差1,036mを約12分で結びます。ロープウェイは2区間に分かれ、第1ロープウェイは新穂高温泉駅から鍋平(なべだいら)高原駅までで、第2ロープウェイに乗り換えます。第2ロープウェイの駅は鍋平高原駅からは3分ほど歩いたところにあるしらかば平駅で、ここからは日本唯一の2階建てゴンドラになります。
千石平からの3,000m級北アルプスの風景はまさしく絶景で、四季折々に美しい風景を見せてくれます。新穂高温泉口駅、しらかば平駅、西穂高口駅にはレストランや売店があります。
第2ロープウェイのゴンドラは2020年にリニューアルされています。
新穂高ロープウェイ
電話番号:2578-89-2252
営業時間・料金等:オフィシャルホームページ参照
URL:https://shinhotaka-ropeway.jp/
脚注1:安房(あぼう)トンネル(安房峠道路)
安房峠道路(延長 5,600m・有料道路)は、松本市を起点に高山市、白鳥町を経て福井市に至る一般国道158 号中部縦貫自動車道(延長 160km)の一区間と位置付けられています。長野県から国道 158号線を西へ進むと焼岳近くの上高地入口手前で安房峠に上る旧道から分かれ、安房トンネルで県境を越え、湯ノ平トンネルを経て岐阜県の平湯温泉で再び国道 158 号線に接続します。
道路構造の最大の特徴は延長 5,600mの大部分が同自動車道最大の難所とされる安房峠(標高1,790m)の直下に設置された延長 4,370mの安房トンネル(標高 1,373m)で占められている点で、本トンネルは焼岳火山群中の活火山であるアカンダナ山南側の高温帯を通過しています。安房トンネルの建設工事はこの高熱帯の中での作業であるだけでなく、大量の湧水が発生するなど大変困難を極めた難工事でした。
旧道は 11 月中旬~5 月中旬の間、積雪により冬季通行不能であったり、降雨により通行が規制されていましたが、安房峠道路の開通で通年通行が確保され、所要時間は 30 分から 5 分に、距離も 15.6kmから 5.6kmに短縮されました。
安房峠道路開通後の1年間では、岐阜県飛騨地域と長野県安房トンネル周辺を訪れた観光客が約 185 万人増加しています。(出典:(株)東海総合研究所調べ)
参照:安房峠道路の概要 NEXCO中日本
https://www.c-nexco.co.jp/images/news_old/2938/0ebc7030c3578cfc07075b59afa2c4f6.pdf
脚注2: 福地の化石産地(ふくじのかせきさんち)
福地地域は古生代の化石産地としてよく知られており、とりわけ高原川(平湯川)支流のオソブ谷に注ぐ“一の谷”に分布する福地層は、飛騨外縁帯を構成する古生代デボン紀の地層として知られています。同層はおもに石灰岩からなり、これらの中から床板サンゴ、四射サンゴ、層孔虫、ハチノスサンゴ、三葉虫、腕足類など、極めて豊富な化石を産します。これらの多くの貴重な化石が得られることで、この谷一帯が記念物として地域指定されていて、ここへの入山は禁止されています。これらの化石は福知山トレッキングコース入口にある「化石遊歩道」で観察できます。
参照:岐阜県の地質地図[ジオランドぎふ] 福地の化石産地
脚注3: 蒲田温泉
享保(きょうほう)年間(1716年~1736年)に、将軍徳川吉宗(とくがわよしむね)の命令で、当時、幕府直轄地(天領[てんりょう」)だった飛騨の代官だった長谷川忠崇(はせがわただたか)が著した、飛騨を紹介する書物『飛州志』に「蒲田温泉」が登場しています。
参考:飛州志 国立図書館オンライン