本州の中心を南北に走る日本アルプスは、標高3000メートル前後の山々が連なる急峻な山脈で「日本の屋根」と呼ばれています。その北部に当たる北アルプスの山々を縫うように流れる黒部川の上流、富山県立山町に黒部ダムはあります。
日本一の堤高186メートルの黒部ダムは堤の長さが492メートルもあり、貯水量は2億トンを誇る日本最大級のダムです。ダム周辺は国立公園にも指定されているため自然が豊富で眺めも良く、多くの観光客が訪れています。
【なぜダムは作られた?】
黒部ダムの建設は、1956年に始まりました。当時は第二次世界大戦が終わって間もない頃で、関西地方は深刻な電力不足に陥っていました。この問題を解決するため、黒部ダムは水力発電専用のダムとしてつくられました。
急峻な山々に囲まれた建設地は近づくのも困難なため、長野県大町からトンネルが彫られ、そこを通って資材が運ばれました。現在このトンネルは関電トンネルという名称となり、長野県側から黒部ダムへ行くときのルートとなっています。
ダムの工事は難航を極め、1963年に完成するまでに171人もの人たちが命を落としました。現在黒部ダムには、この171人の人たちを慰霊するための碑が立っています。
【黒部ダム最大の見所とは?】
黒部ダム最大の見所は、何と言っても毎秒10トンもの水を放流する観光放水です。巨大なダムには放水を見るためのビュースポットが複数あり、ダムが一望できる展望台や、えん堤の上、放水口に最も近いレインボーテラスなどから見ることができます。放水は、川底が削れないよう水を霧状にして流していますので、天気の良い日は流れ出る水の上にかかる虹が見えるかもしれません。観光放水は、6月26日から10月15日の間に行われています。期間中に黒部ダムを訪れた人は、毎秒10トンで流れ出る水の迫力を是非とも間近で味わってください。
【黒部ダムと立山黒部アルペンルート】
立山黒部アルペンルートとは、富山県の立山駅から長野県の扇沢までをつなぐ世界有数の山岳観光ルートです。このルートは北アルプスを横切って走り、ケーブルカーや電気バス、ロープウェイを乗り継ぎながら、山を越えていきます。黒部ダムはこの立山黒部アルペンルートの途中にあります。長野県側からはトンネルを通るバスに乗るだけなのでアクセスが容易ですが、景色という点からは物足りないかもしれません。他方、富山県側からのアクセスは距離が長く時間がかかりますが、ケーブルカーやロープウェイから雄大な北アルプスの景観を楽しむことができます。旅の都合に合わせてルートの選択ができますが、もしも時間とお金に余裕があるならば、一番のおすすめはやはり端から端までアルペンルートの完全走破でしょう。