九州中部に位置する熊本県阿蘇市には、9万年前の火山活動によりできた大きなカルデラがあります。どれくらい大きいかというと、東西約18キロメートル、南北約25キロメートル、周囲を囲う外輪山は約128キロメートルにもなります。外輪山の内側には3つの街があり5万人もの人々が生活をしているというのですから、いかに大きいかわかるというものです。
広大な外輪山の中には草原が広がっていて、牛や馬が放牧されるのどかな風景が広がっています。その中心部には5つの高い山があり、阿蘇五岳と呼ばれています。阿蘇山とは、この阿蘇五岳から外輪山までを含めた部分のことを指し、火山がつくった緑の平原と現在も活動を続ける火山が織りなす大地は世界ジオパークにも指定されています。
【阿蘇の火山、中岳を登ろう】
阿蘇五岳のなかで今でも火山活動をしているのが中岳です。中岳は標高が1506メートルありますが、頂上まで阿蘇パノラマラインが通じているため自動車で行くことができます。
頂上までの道は最初のどかな草原を通り、中岳の麓の草千里ヶ浜では放牧された馬たちが草をはむ姿が見られます。道中にある阿蘇火山博物館では火山の歴史や変化に富んだ阿蘇の四季を知ることができるので、ぜひとも立ち寄ってみてください。
頂上付近になると道はごつごつした岩場に変わり、火口直前には砂千里ヶ浜と呼ばれる荒々しい景色が広がっています。荒涼とした砂と岩の大地を通っていると、火口に近づいているという感覚が否応なしに増していきます。そして頂上には東西400メートル、南北1100メートルの火口が口をあけ、ぼこぼこと中にたまった水が音を立てる様子や立ち上る水蒸気などを見ることができます。「地球の呼吸」に例えられるその様子は、私たちにこの大地が生きていることを強く訴えてきます。
もしも体力に自信があるのならば、仙酔峡から阿蘇五岳最高峰の高岳(1592メートル)を通って中岳までトレッキングするのもお薦めです。とくに5月下旬から6月上旬にかけて仙酔峡ではミヤマキリシマの群生が一斉に花開くので、天気のいい日に歩けば気分も最高です。阿蘇山周辺には火山に由来する温泉もたくさんあるので、登山で汗をかいた後は温泉でゆっくり疲れを取ることもできます。
【外輪山もまた最高】
阿蘇山の周囲を囲う外輪山沿いにはミルクロードが通っており、火口原に広がる草原と雄大な阿蘇五山を見ながらドライブすることができます。ミルクロードとは県道339号、12号、45号をつないだルートの愛称で、牧場が点在する中を走るのでこの名前が付けられています。牧場の緑、平原の緑を通るルートは秀逸で、途中にある大観峰の展望台からは阿蘇の街並みや阿蘇五岳が見渡せる一大パノラマが楽しめます。また、運が良ければ外輪山の中一面が雲海に覆われた神秘的な景色を見ることできます。雲海は前日が温かく、翌日の明け方の温度が低くなると発生しやすいそうです。滅多に見られる光景ではないそうですが、もしも見られれば一生忘れられない光景になるので、ぜひチャレンジしてみて下さい。 火山がつくった大自然の光景と、そこで伸び伸びと生きていく牛や馬。さらに食べ物も文句なし。これだけ揃った阿蘇山は、まさに訪れるのにピッタリの場所と言えるでしょう。