大雪山は北海道中央部に位置する火山群で、正確には大雪火山群や大雪山系と呼ばれます。北海道最高峰の旭岳(標高2,291m)をはじめ2,000m級の山々が連なるその姿は「北海道の屋根」と呼ばれるに相応しく、周囲の山々も含めた一帯は大雪山国立公園に指定されています。
大雪山の山々は標高2,000m前後ですが、高緯度に位置するため本州の3,000m級の山に匹敵する高山環境が広がり、250種類以上もの高山植物が分布しています。その中にはエゾオヤマノエンドウやホソバウルップソウなど大雪山固有種も含まれ、開花の時期には色とりどりの花畑が出現します。「神々の遊ぶ庭」を意味する「カムイミンタル」とはこの地に昔から住んできたアイヌの人々がつけた呼び名で、今でもそのままの光景が大雪山の至る所に広がっています。
【大雪山に登ってみよう】
大雪山登山で真っ先にお勧めできるのは最高峰の旭岳(標高2,291m)と黒岳(標高1,984m)です。なぜならどちらの山にもロープウェイやリフトがあり、登山が苦手な人でもかなりの高さまですぐに行けるからです。 旭岳では麓の山麓駅から標高1,600mにある姿見駅まで、ロープウェイで行きます。山麓駅の隣には旭岳ビジターセンターがあるので、大雪山の動植物や山の情報を事前に仕入れておくと、よりいっそう登山が楽しめます。姿見駅からは、5つの展望台を周りながら姿見の池まで続く一周約1.7㎞の散策コースが整備されています。道中には高山植物の群生地や夫婦池と呼ばれる二つの池があり、エゾリスなどの動物も生息しています。目的地の姿見の池は写真スポットです。背後に見える旭岳の山頂と姿見の池が入るようにフレームに納めましょう。とくに天気のいい日は湖面がエメラルドグリーンに輝き、あたりの噴気孔から立ち上る水蒸気と相まって神秘的な光景を目にすることができます。
黒岳では層雲峡駅からロープウェイで黒岳駅(標高1,300m)まで登り、リフトに乗り継いで標高1,570mの7合目まで行くことができます。また、黒岳駅から7合目までは散策コースが続いており、高山植物のロックガーデンや大雪山の資料館などを巡りながら登ることもできます。7合目からは近自然工法でつくられた「黒岳カムイの森の道」が続いており、あまりょうの滝展望台まで片道約15分のトレッキンを楽しむことができます。 旭岳も黒岳も、散策コースが整備されているとはいえ山の道です。トレッキングを楽しむ際には歩きやすい靴と、防寒用の上着は忘れずに持っていきましょう。また、頂上に登るには登山の知識や経験、十分な装備が必要です。登ろうとする人はしっかりと計画を立て、万全の装備で登ってください。
【麓に広がる層雲峡を歩こう】
黒岳の麓には日本第3位の長さを誇る石狩川が流れています。石狩川沿いに広がる層雲峡は、約24㎞にわたって続く断崖絶壁がつくる景勝地です。90m以上の落差がある流星の滝と銀河の滝は層雲峡で最も美しい滝と呼ばれ、近くの双瀑台の展望台からは二つの滝の雄大な姿を一望することができます。また、柱状節理が立ち並び巨大な屏風のようにそびえ立つ大函は、層雲峡を代表する峡谷美です。静かに流れる石狩川と壮大な渓谷が織りなす大函の景観を前にすれば、時間を忘れてじっと見入ってしまうことでしょう。 旭岳や黒岳、層雲峡をはじめ、大雪山では四季折々の景色が楽しめます。夏には高山植物が咲き誇り、秋には紅葉で紅く染まり、冬には静かな雪景色が広がる。カムイミンタルという名の通り神々が遊ぶ庭の光景は、まさに北海道を代表する景勝といえるでしょう。