日本には天神様をお祀りしている神社が約12,000ありますが、それらをまとめる総本宮となっているのが福岡県太宰府市にある太宰府天満宮です。神社は本来神様をお祭りする場所ですが、太宰府天満宮が祀っている天神様は9世紀末に実在した人間で、名前を菅原道真と言います。人間を神様として祀っている神社は他にもいくつかありますが、太宰府天満宮は少し違います。なぜなら、この神社は菅原道真の怨霊を鎮めるために建てられているからです。
【菅原道真って誰?】
菅原道真は845年、学問で有名な菅原家に生まれました。自身も若い頃から学問に親しみ宮中で右大臣の地位にまで上りましたが、政敵から無実の罪を着せられ、京都からはるか遠くの太宰府に左遷されてしまいます。903年、道真は失意の中、太宰府で59歳の生涯を閉じます。
しかしその後、京都では道真を陥れた首謀者が39歳の若さで死んでしまいます。また、疫病が流行り異常気象も続いたので、人々は道真の祟りだと噂をするようになりました。919年、道真の怨霊を鎮めるために道真の墓所の上に社殿が建てられ、それが現在の太宰府天満宮になりました。さらに後になると、道真は神としての地位を授けられ、天神様として祀られるようになりました。
【太宰府天満宮には何があるの?】
太宰府天満宮の境内には、多くの牛の像があります。これは、道真の亡骸を運んでいた牛に因むものです。亡骸を運んでいた牛が突然立ち止まり動かなくなったため、それが道真の意志なのだろうと考えられ埋葬された場所が、現在の太宰府天満宮になります。牛の像のうち、とくに参道から境内に入った正面にある像は御神牛と呼ばれており、学問に秀でていた道真に因んで頭を撫でると知恵を授かると言われています。そのため多くの人に撫でられた像の頭部は、いつもピカピカになっています。
楼門をくぐって本殿に向かうと、本殿両脇に植えられた2本の梅の木が目に入ります。とくに右側の梅は「飛梅」と呼ばれ、道真のあとを追って一夜のうちに京都の道真の屋敷から飛んできたと言われています。本殿では、祭神である天神様になった菅原道真にお祈りができます。道真は学問の神様であるため、毎年受験の季節になるとたくさんの受験生たちが合格祈願をしにやって来ます。受験勉強をどんなにしても、最後は運に頼るしかない。当時、学者として最高の地位についていた道真にお祈りをすれば、受験の運も開けるかもしれません。
【太宰府天満宮を楽しもう】
太宰府天満宮に続く参道にはたくさんのお店が並んでいます。ここで是非食べておきたいのが、名物の梅ヶ枝餅です。パリッとした食感の中に甘いあんこ。一口サイズの焼き菓子なので、ちょっと片手に参道を歩くなんてのもお勧めです。 また、太宰府天満宮の梅は2月から3月上旬が見頃です。この時期には、境内にある約6,000本もの梅の木が一斉に花が開き、あたりは梅の香りでいっぱいになります。梅は菅原道真が好んだ花です。本殿に祀られた天神様といっしょに梅の香を楽しんでみながら、6,000本の梅の花見なんて風流だと思いませんか。