島国である日本の東側には、穏やかな太平洋が広がっています。しかし、西に広がる日本海は、激しい荒海のイメージがあります。福井県北部の三国町にある東尋坊は、まさに日本海のもつイメージを体現しています。
切り立った岩壁、打ち付ける荒波、高く上がる波しぶき。日本海にはこのように荒々しいイメージがあるのですが、実際には天気も良く穏やかな日もたくさんあります。しかし、東尋坊の断崖絶壁を前にするとそんな荒海のイメージが定着するのも無理はないと納得してしまいます。
【東尋坊って何?】
東尋坊は、海岸線に沿って約1キロメートルにわたって巨大な柱状の岩が連なる景勝地です。今から約1300万年前に地表付近まで上昇したマグマが柱状に固まり、五角形や六角形の柱状節理ができました。その柱状節理が地表に表出したのが、東尋坊です。東尋坊で見られる柱状節理は高さが25メートルにもなる極めて大規模なもので、これと同規模のものは世界中でも朝鮮半島の金剛山とノルウェーの西海岸の三か所にしかありません。
伝承によると東尋坊の名前は、福井県東部の平泉寺にいた「東尋坊」という僧の名前に由来しています。彼はとても乱暴で、近辺の百姓たちを苦しめていたと言います。そんな彼にも、あや姫という想いを寄せる女性がおり、真柄覚念という恋のライバルがいました。 1182年4月、東尋坊は乱暴者の仲間たちと東尋坊で酒盛りをします。真柄覚念はそこに差し入れをもって現れ、東尋坊が泥酔すると彼を崖の上から海へと突き落としてしまいます。それから49日間、死んだ東尋坊の無念により海が荒れてしまったため、以後この場所を東尋坊と呼ぶようになったということです。現在でも東尋坊は、自然のままの景観を壊さないように柵などが作られていません。崖の上を歩くときはくれぐれも注意をして下さい。
【東尋坊、陸から見るか?海から見るか?】
東尋坊は自然が創り出した雄大な絶壁です。その光景を楽しめる場所は様々で、陸上・海上のどこから見るかで見える景色も変わってきます。
陸上でのおすすめは、岩場と呼ばれる断崖の上です。先端まで歩いて行けるのですが、端に近づくと断崖の高さに思わず足がすくんでしまいます。勇気を出してがけ下をのぞきたい気持ちに駆られますが、柵など一切ない崖の上ですからくれぐれも無理はしないでください。また海岸まで降りたいという人には、すぐ隣に千畳敷があります。ここは昔の採石場跡で、東尋坊の中では珍しく平らな岩場が広がっています。ここから見える景色は絶景で、ポスターやテレビなどでも使われています。
海上からの景色が見たい人には、遊覧船があります。船は、ゆっくりと東尋坊から2キロメートルほど離れた雄島までの海を約30分かけて一周します。雄島では東尋坊と同じような柱状節理が見られ、特にハチの巣状に岩が集まった「ハチの巣岩」は必見です。そしてこのクルーズの最大の目玉は、東尋坊の中で最も大きな柱状節理が作る入り江、「大池」の探検です。入り江に入れば高さ25メートルにもなる断崖が並び、視線を上げればはるか上から手を振る人の姿が見えます。こんな光景は日本全国でも、東尋坊でしか見られないでしょう。この場所を訪れた際には、ぜひとも陸と海、両方から景色を楽しんでみてください。