【日本と宇宙】世界規模で天文学をリードする国立天文台

Sponsored Link

東京三鷹に本部を置く国立天文台は、正式名称を大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台といい、観測、理論の両面から日本の天文学を研究する機関です。

国立天文台には本部のある三鷹キャンパス(旧東京天文台)のほか、国内は国立天文台水沢(岩手県)、江刺地球潮汐観測施設(岩手県)、国立天文台野辺山(長野県)、神岡分室(岐阜県)、ハワイ観測所岡山分室(岡山県)、石垣島天文台(沖縄県)、茨城観測局(茨城県)、山口観測局(山口県)、VERA入来観測局(鹿児島県)、VERA小笠原観測局(鹿児島県)、VERA石垣島観測局(沖縄県)、海外にはハワイ観測所(ヒロオフィス)、すばる望遠鏡(ハワイ島マウナケア山頂・標高4,200m)、チリ観測所(サンチャゴオフィス)、アルマ望遠鏡(チリ・山麓施設・アタカマ砂漠標高2,900m)、アルマ望遠鏡(チリ・山頂施設・アタカマ砂漠標高5,000m)、アステ望遠鏡(チリ・アタカマ砂漠・標高4,860m)などの研究観測施設があります。

国立天文台の原点は明治期に創設の東京麻布・東京天文台

日本で星が観測されるようになったのは江戸時代です。幕府より任命された天文方(てんもんがた)が暦を編纂するために時に応じて星座観測を行っていましたが、1782年(天明2年)浅草に浅草天文台が設立され、本格的に星座観測が行われるようになりました。伊能忠敬(いのうただたか)が天文方の高橋至時(たかはしよしとき)に天文学や測量術を習い、日本地図を完成したのもこの時代で、天文方は非常に高度な観測技術を身につけていました。

明治時代に入り天文方は廃止になりましたが、1888年(明治21年)に東京麻布飯倉(現港区麻布台)に東京帝国大学(現東京大学)の施設として東京天文台が作られました。しかし、麻布の市街地化により天文観測には支障をきたすことになり、1924年(大正13年)に、現在本部のある三鷹村(現東京都三鷹市)へ移転します。

東京天文台は、1988年(昭和63年)に岩手県にあった緯度観測所、名古屋大学空電研究所の一部と合併し国立天文台が発足し、2004年(平成16年)には現組織になっています。

海外にも観測施設を建設。世界と連携する国立天文台

天文台といえばまず思い浮かべるのは“望遠鏡”です。国立天文台は国内外にさまざまな望遠鏡を所有し、世界各国と協力して観測を続けています。

望遠鏡としていちばん身近なのは半球型の天体ドームに収められている光学式の望遠鏡でしょう。国立天文台の光学式の望遠鏡として最も大きいのは、ハワイのマウナケア山にある反射望遠鏡「すばる望遠鏡」で、8.2mもの反射鏡を備えています。ドームは半球型ではなく円筒形です。三鷹キャンパスには50cm公開望遠鏡があります。カセグレン式という最もオーソドックスな反射望遠鏡で一般公開されて観望会などにも使われています。

反射望遠鏡としてはほかに岡山天体物理観測所の「188cm反射望遠鏡」や石垣島天文台に設置されている「むりがぶし望遠鏡」などがあります。

現在の主力は電波望遠鏡

長野県野辺山の国立天文台野辺山に設置されている「45m電波望遠鏡」は“ミリ波”と呼ばれる電波を観測できる世界最大級の電波望遠鏡です。同じ野辺山にある「ミリ波干渉計」(2020年現在運用停止)は6台の電波望遠鏡をつないで、直径最大600mに相当する観測ができる望遠鏡で、その技術は南米チリで活躍中の「アルマ望遠鏡」に引き継がれています。

「アルマ望遠鏡」はチリ北部のアタカマ砂漠標高5,000m地点に世界22カ国が協力して運用する望遠鏡で、66台のパラボラアンテナを結合して視力6,000に相当する分解能で、宇宙や地球の起源を探っています。

国内4カ所(岩手県奥州市、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市)に設置されている電波望遠鏡「VLBI電波望遠鏡群」は、4カ所の電波望遠鏡を合成することによって直径2,300kmの観測網を構築するものです。さらに韓国や中国、タイなどの電波望遠鏡とも連携し、もっと大きな観測網をめざして計画が進んでいます。

進化し続ける次世代型望遠鏡も建設中

ほかに現在運用中の望遠鏡には、太陽観測衛星「ひので」に搭載されている「可視光望遠鏡」や「X線望遠鏡」、三鷹キャンパスの「太陽フレア望遠鏡」などがあります。

また、岐阜県飛騨市神岡に国立天文台や京都大学などが協力して建設中の「大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)」や日本、米国、カナダ、中国、インドの国際協力事業で建設を進めている次世代型望遠鏡、TMT(Thirty Meter Telescope、30メートル望遠鏡)は、これからの天文学や宇宙探査に新しい光を当て、研究が一気に進むと期待されています。

主な研究施設・観測所

三鷹キャンパス(本部)

現在も「太陽フレア望遠鏡」を使った観測や天文学研究の中心地としての役割を果たしています。敷地内には旧東京天文台の「第一赤道儀室」や「天文台歴史館」などの国登録有形文化財に指定されている歴史的施設が保存されていて見学できます。4D5Uドームシアターでは直径約10mのドームスクリーンに全天周立体映像が映し出されます。

住所:東京都三鷹市大沢2-21-1

電話番号:0422-34-3600

見学可能

水沢キャンパス

1899年に開設された緯度観測所が前身で、国立天文台の基礎となった施設のひとつです。現在はVLBI観測所となっています。敷地内には初代所長の木村榮(ひさし)を記念した「木村榮記念館」、隣接して「奥州宇宙遊学館」があります。

住所:岩手県奥州市水沢星ガ丘町2-12

電話番号:0197-22-7111

見学可能

国立天文台野辺山

長野県野辺山にある国立天文台野辺山(旧野辺山宇宙電波観測所)の「45m電波望遠鏡」や「ミリ波干渉計」など、大小数多くのパラボラアンテナが並ぶ風景は、まるで映画に出てくる宇宙基地のようです。2019年6月にはリモートによる観測になり、規模が縮小されましたが、電波望遠鏡群は健在で人気の見学コースは公開されています。

住所:長野県南佐久郡南牧村野辺山462-2

電話番号:0267-98-4300

見学可能

石垣島天文台

沖縄県石垣島にある天文台です。九州沖縄最大の105cm反射望遠鏡「むりかぶし望遠鏡」を備え、日常の研究のほか天体観測会なども開催されています。

住所:沖縄県石垣市新川1024-1

電話番号:0980-88-0013

見学可能

ハワイ観測所岡山分室

旧岡山天体物理観測所で、岡山県の竹林寺山山頂にあります。188cm反射望遠鏡や91cm反射望遠鏡などいくつかの天体ドームが点在しています。見学等の管理は隣接する岡山天文博物館が行っています。

住所:岡山県浅口市鴨方町本庄3037-5

電話番号:岡山天文博物館/0865-44-2465

見学可能

海外の観測所

すばる望遠鏡

ハワイ島マウナケア山頂(標高4200メートル)にある世界屈指の反射望遠鏡です。見学可能(2020年は見学休止です)。

アルマ望遠鏡(山麓施設)

南米チリ北部のアタカマ砂漠(標高2900メートル)にあります。予約制で見学可能です。

アルマ望遠鏡(山頂施設)

チリ、アタカマ砂漠(標高5000メートル)にあり、こちらは見学不可です。

(すべての写真提供:国立天文台)