賑やかな喧騒にあふれた東京都渋谷区の真ん中に、そこだけ時間から取り残されたように広がっている広大な森があります。一見、自然林のように見えるその森は全国から献木された10万本もの木が植えられた人工林で、その森の奥に明治神宮があります。
1920年に創建された明治神宮には、明治天皇と昭憲皇太后が祀られています。明治天皇の在位していた時代は明治時代と呼ばれ、武士の世が終り日本が近代化へと歩みを進める変革の時代でした。二人の死後、国民の間から二人を祀りたいという声が上がり、明治神宮がつくられました。
入口の鳥居をくぐり本殿へと続く南参道を歩いていると、たくさんの酒樽が積まれた棚が目に入ります。これらはみな明治神宮に奉納されたお酒であり、それぞれの樽には四斗(72リットル)ものお酒が入ります。もっともこれらはみな展示用の樽で、中身は空っぽになっているので飲むことはできません。珍しいことに、明治神宮には日本酒だけでなくワインも奉納されています。これは明治天皇がワインを好んでいたからだといいます。
参道の先には大鳥居があり、そこを抜けると拝殿に到着します。拝殿の奥には本殿があるのですが、一般には公開されていないため入ることはできません。従って参拝は拝殿で行います。明治神宮は正月の初詣客が日本で一番多い神社で、ピーク時には入り口から拝殿までのわずか1キロメートルほどの距離を進むのに2時間から3時間もかかるといいます。
境内の南側には御苑があり、隔雲亭や清正井(きよまさのいど)などを通る小径を歩きながら四季折々の自然を楽しむことができます。また、御苑の中にある菖蒲田には約150種、1,500株もの花菖蒲が植えられていて、見頃を迎える6月中旬に訪れると都会とは思えないほど一面に咲き誇る菖蒲の花を見ることができます。