熊野古道の温泉 2 大辺路・小辺路の温泉

忘帰洞のイメージ1
(那智勝浦温泉「忘帰洞」 画像提供:和歌山県観光連盟)
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「熊野古道」は、世界文化遺産『紀伊山地の霊場と参詣道(きいさんちのれいじょうとさんけいみち・Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range)』に登録されている『熊野三山』への参道です。

大門坂中辺路のイメージ
(大門坂 画像提供:和歌山県観光連盟)

同じく世界遺産である高野山から『熊野三山(「熊野本宮大社[くまのほんぐうたいしゃ]」「熊野速玉大社[くまのはやたまたいしゃ]」、「熊野那智大社[くまのなちたいしゃ]」)』へ向かう“小辺路(こへち)”、京都から紀伊半島西側の海岸線を回って紀伊田辺から向かう“中辺路(なかへち)”、田辺からさらに紀伊半島を海岸線沿いに歩く“大辺路(おおへち)”、世界遺産の吉野から大峯(おおみね)を経由する山岳路“大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)”、伊勢神宮と『熊野三山』を結ぶ“伊勢路”が『参詣道』として世界遺産に指定されています。

熊野本宮大社の外観
(熊野本宮大社 画像提供:和歌山県観光連盟)
熊野速玉大社の外観
(熊野速玉大社 画像提供:和歌山県観光連盟)
熊野那智大社の外観
(熊野那智大社 画像提供:和歌山県観光連盟)

熊野詣(くまのもうで)の人たちにとってひとときのやすらぎは温泉でした。「熊野本宮大社」に近い“中辺路”には「湯の峰温泉(ゆのみねおんせん)」や「川湯温泉(かわゆおんせん)」などの温泉(熊野古道の温泉1参照)が湧き、「熊野那智大社」近くの海岸に「南紀勝浦温泉(なんきかつうらおんせん)」、“大辺路”には「南紀白浜温泉(なんきしらはまおんせん)」があります。“小辺路”には「十津川温泉」や近くに紀州藩の御用湯だった「龍神温泉」もあります。

湯の峰温泉イメージ3
(入浴できる世界遺産、湯の峰温泉「つぼ湯」 『熊野古道の温泉1 参照』)

大陸プレートが関係する「熊野古道の温泉」

温泉には“火山性温泉”と“非火山性温泉”があるのですが、「熊野古道」周辺には火山がありません。しかし湧き出る温泉には火山由来の硫黄やその他の火山性物質が含まれています。「南紀白浜温泉」や「南紀勝浦温泉」は海岸に湧いているのですが、古くからある源泉にはやはり火山性物質が含まれています。

海岸に湧く温泉は、一般的には“海洋型”といって太古の地殻変動によって地中深く閉じ込められた海水が、地熱で温められたもので、基本的には塩化物泉です。しかし「南紀白浜温泉」や「南紀勝浦温泉」の源泉の中には、硫黄などの火山性物質が溶け込んだ温泉があります。

忘帰洞のイメージ1
(那智勝浦温泉「忘帰洞」 画像提供:和歌山県観光連盟)

この現象は最近までいくつかの説があり、論争になっていたのですが、2000年代に入り、決定的な研究結果が発表になりました。

日本の紀伊半島を含む西半分はユーラシアプレート上にあるのですが、その下には太平洋側のフィリピン海プレートが潜り込んでいます。潜り込む際の摩擦でプレートの岩石にものすごい圧力がかかると岩石から何100度という“水”が出る(脱水作用)そうで、多くの「熊野古道の温泉」はその超高温水が地下水などによって冷やされ、また硫黄などの成分が混ざって地上に出てきたというものです。

参照:温かい温泉が湧き出す仕組み 岐阜県温泉協会

岐阜発!温泉博物館 | 岐阜県温泉協会公式サイト
岐阜県温泉協会の公式サイトへようこそ。岐...

これは世界的にも珍しく、兵庫県の「有馬温泉」も同様な温泉といわれています。

大名や皇族も入った洞窟風呂がある「南紀勝浦温泉」

忘帰洞のイメージ2
(「忘帰洞」 画像提供:和歌山県観光連盟)

「南紀勝浦温泉」は、「熊野那智大社」や「那智の滝」に近い海岸線に湧く温泉です。温泉としての歴史は古く、平安時代には使われていたようです。温泉の湧出量は豊富で、昔からある泉源のほか、掘削したものも含め200本以上の源泉があるといわれています。

特に勝浦漁港を守るように突き出ている狼煙半島(のろしはんとう)にある天然の洞窟風呂『忘帰洞』には硫黄の香りがする温泉があふれ、昔から熊野詣の温泉として知られていました。『忘帰洞』は現在温泉宿『ホテル浦島』の洞窟風呂として使用されています。『ホテル浦島』にはもうひとつ洞窟風呂『玄武洞』があり、宿泊者のほか日帰り入浴でも利用できます。泉質は含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉です。

青岸渡寺の三重塔と那智の滝
(世界遺産「青岸渡寺(せいがんとじ)三重塔」と「那智の滝」 画像提供:和歌山県観光連盟)

「南紀勝浦温泉」には10軒の宿泊施設(南紀勝浦温泉組合加盟宿)があり、各施設で温泉の泉質が違います。泉質は南紀勝浦温泉組合ホームページで確認できます。

南紀勝浦温泉

住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町

問い合わせ先:南紀勝浦温泉旅館組合

電話番号:0735-52-0048

アクセス:

公共交通機関/JR紀勢本線紀伊勝浦駅から徒歩約10分

車/大阪方面=紀勢自動車道すさみ南ICから約65分 名古屋方面=紀勢自動車道尾鷲北ICから熊野尾鷲道路経由約1時間20分

URL:http://katsuuraonsen.jp/

日本最古の温泉のひとつ「南紀白浜温泉」

南紀白浜温泉の源泉
(行幸源泉 画像提供:南紀白浜観光協会)

南紀白浜温泉は、紀伊半島の南西部、「熊野古道」のひとつ“大辺路”沿いに湧く温泉です。日三大古湯として知られ、「湯の峰温泉」とともに日本最古の温泉のひとつに数えられています。

飛鳥時代(592年~710年)から天皇をはじめの多くの皇族、貴族が訪れたと伝わっていて、その昔は“牟婁温湯(むろのゆ)”“紀温湯(きのゆ)”といわれていました。

牟婁温湯
(画像提供:和歌山県観光連盟)

「南紀白浜温泉」には80を超える宿泊施設、25か所の外湯・足湯があり、源泉も数多くあります。その中でも古くからある泉源は“行幸源泉(みゆきげんせん)”で、泉質はナトリウム・塩化物泉、泉温は78℃です。また古い泉源のひとつ“砿湯(まぶゆ)”は含硫黄-ナトリウム-塩化物・強塩温泉で、泉温は74℃となっています。

「南紀白浜温泉」の各温泉施設の泉質は、南紀白浜観光協会のホームページまたは各施設のホームページなどで確認できます。

南紀白浜温泉の上空からの写真

南紀白浜温泉

住所:和歌山県西牟婁郡白浜町

問い合わせ先:南紀白浜観光協会

電話番号:0739-43-3201

アクセス:

公共交通機関/JR紀勢本線白浜駅下車、南紀白浜温泉方面行き路線バスで約15分、白浜空港から南紀白浜方面行き路線バスで約15分

車/紀勢自動車道南紀白浜ICから約10分

URL:http://www.nankishirahama.jp/

「熊野速玉大社」に近い一軒宿「雲取温泉」

雲取温泉イメージ
(画像提供:和歌山県観光連盟)

「雲取温泉」は、「熊野速玉大社」から車で20分ほど、熊野川の支流高田川沿いにある『高田グリーンランド』の温泉施設です。『高田グリーンランド』は、宿泊施設、研修ルーム、体育館などを併せもつ複合施設で、日帰り入浴にも対応しています。

泉質はアルカリ性単純温泉で、熊野地方では珍しい乳白色をしており、ゲルマニウムを含んだ効能豊かな温泉です。源泉は地下1500mからくみ上げられています。

高田グリーンランド・雲取温泉

住所:和歌山県新宮市高田1810

電話番号:0735-29-0321

アクセス:

公共交通機関/JR紀勢本線新宮駅から路線バスで約30分

車/大阪方面=阪和自動車道南紀田辺ICから約1時間45分、名古屋方面=熊野尾鷲道路熊野大泊ICから約50分

URL:http://www.kumotori.yad.jp/

小辺路のオアシス「十津川温泉」

十津川温泉のイメージ

「十津川温泉(とつかわおんせん)」は、高野山から熊野本宮大社へ向かう全長72kmほどの“小辺路”の中ほどにある日本一面積の広い村(672平方キロ)、奈良県十津川村(とつかわむら)にある温泉です。

村の真ん中を“小辺路”が貫いていて、十津川村内だけでも伯母子峠(おはことうげ)、三浦峠、果無峠(はてなしとうげ)という3つの1000m級の峠を越えなくてはいけないという難所です。「十津川温泉」は、三浦峠と果無峠の間に位置し、“小辺路”のオアシスでした。

「十津川温泉」は、江戸時代の元禄年間(1688年~1704年)に炭焼き職人によって発見されたといわれています。温泉は豊富で、泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(旧重曹泉)で、泉温は70℃あります。十津川村には「小辺路」のルート上ではないのですが、単純硫黄泉の「湯泉地温泉(とうせんじおんせん)」、含硫黄ナトリウム炭酸水素塩泉の「上湯温泉」もあります。すべての温泉施設で源泉かけ流しです。

果無集落
(「小辺路」果無集落)

「十津川温泉」バス停から1時間ほどの古道沿いにある「果無集落(はてなししゅうらく)」は“天空の郷“と呼ばれ、見渡す風景は“小辺路”でも一二を争う秘境です。

十津川温泉/十津川村

住所:奈良県吉野郡十津川村平谷

問い合わせ先:十津川村観光協会

電話番号:0746-63-0200

アクセス:

公共交通機関/近畿日本鉄道大和八木駅から路線バスで約240分、JR和歌山線五条駅から路線バスで約180分

車/南阪奈道路葛城ICから国道310、168号線経由で約120分、

URL:https://www.vill.totsukawa.lg.jp/traveling_guide/onsen_gou/

日本3大美人の湯のひとつ「龍神温泉」

竜神温泉のイメージ

「龍神温泉」は、『高野山』から『熊野三山』を結ぶ現代のメイン街道、国道371号線沿いにあります。かつては『高野山」から『熊野三山』へは十津川村を通る“小辺路“が最短でしたが、『高野山』から「龍神温泉」を経て“中辺路”に合流する“龍神道”も、中間に「龍神温泉」があるのでなかなかの人気ルートでした。

この「龍神温泉」経由のルートが本格的に脚光を浴びたのは、『高野山』から「龍神温泉」方面へ抜ける有料道路「高野龍神スカイライン」が1980年に開通してからです。さらに、2003年は国道371号線の一部として無料開放されたため、『高野山』と『熊野三山』間が一気に便利になり、メインルートとなりました。

「龍神温泉」の歴史は古く、1300年ほど前に修験道の開祖といわれる役小角(えんのおづぬ・役行者[えんのぎょうじゃ])が発見し、弘法大師(こうぼうだいし・空海[くうかい])が浴場を開いたと伝わっています。江戸時代初期には紀州藩の藩主徳川頼宣(とくがわよりのぶ・徳川家康の10男)が気に入り、御用湯として宿泊施設『上御殿』『下御殿』を建てています。『上御殿』『下御殿』は現在でも温泉宿として営業中です。

上御殿の外観
(早朝雨戸の閉まった「上御殿」)

藩主の宿泊所だった『上御殿』の建物は、1885年(明治18年)に再建されたもの(国の登録有形文化財)が現役で使用されていて、2階には殿様の寝室「御成間(おなりのま)」があります。

泉質はナトリウム・炭酸水素塩泉で、含放射能とは表示されませんがラジウムを含有しています。湯温は46~47℃で、お肌がスベスベになる温泉で、川中温泉(群馬県)、湯の川温泉(島根県)とともに“日本3大美人の湯”として知られています。

龍神温泉

住所:和歌山県田辺市龍神村龍神

問い合わせ先:龍神観光協会

電話番号:.0739-78-2222

アクセス:

公共交通機関/JR紀勢本線紀伊田辺駅から路線バスで約80分、龍神温泉下車または、高野山から路線バスで約35分、護摩壇山で路線バス乗り換え約25分、龍神温泉下車

車/大阪方面=阪和自動車道南紀田辺ICから国道29号背、371号線経由約1時間、名古屋方面=熊野尾鷲道路熊野大泊ICから約8分、高野山方面=国道371号線(旧高野龍神スカイライン)経由で約50分、熊野本宮大社方面=本宮から国道311号線(中辺路)、国道371号線経由約70分

URL:http://www.ryujin-kanko.jp/