霊場恐山のお寺で入る「恐山温泉」

宇曽利湖畔の火山性ガスを含む水蒸気
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「恐山(おそれざん)」はイタコ(霊能力者)で知られる霊場「恐山菩提寺(おそれざんぼだいじ)」が有名ですが、「恐山」自体は青森県むつ市の下北半島にある活火山の総称です。

「恐山」は標高878mの釜臥山(かまふせやま)を最高峰とする数峰の外輪山と、火口原にたまったカルデラ湖「宇曽利湖(うそりこ)」からできていて、「宇曽利湖」畔には亜硫酸ガスなどの火山性ガスを含む水蒸気があちらこちらから噴き出す、荒涼とした噴気地帯が広がっています。

宇曽利湖畔の火山性ガスを含む水蒸気

噴気地帯は東北一の霊場

「宇曽利湖」畔の噴気地帯は「恐山菩提寺」境内になっていて、死者を供養するための霊場として参拝する人が絶えません。特に水子供養のためのカラフルな“風車”があちらこちらに飾られ、周囲の岩だらけで無機質な風景と相まって異様な雰囲気を醸し出しています。

カラフルな風車と石像

噴気地帯から火山ガス性の水蒸気とともに、強酸性の温泉も湧き出していて、いくつもの小さな流れとなって「宇曽利湖」に流れ込んでいます。「宇曽利湖」でも湖底から温泉が湧き出しているようで、湖水が白濁しています。

宇曽利湖の画像
宇曽利湖

イタコを介して故人と会話ができる「恐山菩提寺」

「恐山菩提寺」はおよそ1,200年前に岩手県平泉(ひらいずみ)の中尊寺を開山したことでも知られる慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)よって創建されたといわれている古刹です。噴気地帯が『地獄』で「宇曽利湖」が『極楽』にたとえられていて、「人は死ねばお山に行く」という信仰がある東北地方一の霊山として今でも参拝者が絶えません。

特に7月の恐山大祭や10月の秋詣り(あきまいり)の際に行われる“イタコによる口寄せ”には全国から故人の霊に会うために全国から多くの人々が訪れます。

恐山菩提寺
恐山菩提寺

イタコとはあの世に逝った人の魂を自分に乗り移して現世の人たちと会話をする(口寄せ)という巫女(みこ・神に仕える女性)です。「恐山菩提寺」の大祭や秋詣りの際にはイタコが口寄せをするテントが境内に何張りも並び、口寄せ希望者が列をなしています。

『地獄』の先には『極楽』が待っている

「恐山菩提寺」にはJR大湊線下北駅から路線バスか車でも門前まで行くことができますが、

菩提寺に参拝するには門前近くにある“三途の川(さんずのかわ)”を渡らなくてはいけません。つまり「恐山菩提寺」はあの世にあるのです。

三途の川には赤い太鼓橋が架かっています。本来はこの太鼓橋を渡るのですが、2022年6月の完成を目指して架け替え工事に取りかかっていて通行はできません。残念ながらしばらくは別の橋を渡って入山することになります。

三途の川に架かる太鼓橋
三途の川に架かる太鼓橋

「恐山菩提寺」の総門を入って左側に本堂、正面に大きな山門があります。山門の正面にあるのが地蔵殿です。敷地は広くこのあたりにはまだ緑も多くありますが、硫黄の匂いがただよい異様な雰囲気に包まれています。

地蔵殿の左手には岩だらけの荒涼とした風景が広がっています。その先はあちらこちらに水蒸気が噴き出し、今にも噴火しそうな恐ろしげな広い“賽の河原(さいのかわら)”です。ここには無間地獄(むげんじごく)や血の色地獄などといわれる有毒ガスの噴き出し口や湯だまりがあり、数多くの奉納されたのであろう仏像が立っています。特に血の色地獄の湯だまりは、普段は透明なのですが、時により真っ赤に染まります。まさに血の色です(赤い藻が繁殖するそうです)。

血の色のように見える湯
赤く染まる湯だまり

“賽の河原”の地獄地帯を抜けると美しい浜に出ます。“極楽浜”で、波静かな「宇曽利湖」とその対岸にそびえるのは外輪山の1つ大尽山(おおつくしやま・標高828m)です。ここまで来るとするまさしく『極楽』の風景、なにかホッとします。

宇曽利湖と大尽山
宇曽利湖と大尽山

「恐山菩提寺」境内に湧き出す酸性の温泉

「恐山」には温泉が湧いています。おそらく酸性の火山型硫黄泉(硫黄泉[硫化水素型]) またはそれに類する含硫黄の温泉ですが、自然湧出するその温泉が使用されている施設はありません。

しかし恐山にも温泉施設があります。「恐山菩提寺」境内にある温泉施設です。この温泉は明治期から昭和の初期にあった硫黄採掘鉱山から採掘時に湧き出したものです。

恐山菩提寺内の薬師の湯
薬師の湯

「恐山菩提寺」の境内には4軒の湯屋が建っています。明らかにお寺の建物とは違う木造平屋の小屋で、「冷抜(ひえ)の湯」「古滝(こたき)の湯」「薬師(やくし)の湯」「花染(はなぞめ)の湯」です。これらは日帰り入浴ができる施設で、「冷抜の湯」は女性専用、「古滝の湯」が男性専用になっていて、「薬師の湯」は男女入れ替え制で、「花染(はなぞめ)の湯」は混浴になっています。

冷抜(ひえ)の湯
冷抜(ひえ)の湯

殺菌力が強く皮膚病に高い効果

泉質は含鉄・硫黄-ナトリウム-塩化物泉で、強酸性の温泉です。色は少し緑がかった灰色の濁り湯で、時間、気温、天候等で少し変化します。源泉温度は70度以上と高く、湯船にはそのままかけ流されています。適温で入れるように湯船に流されるお湯の量で温度を調整していますが、それでもかなり熱いです。

ただし、有害な硫化水素のガスを多めに含んでいるため、入浴の際は窓を開けることをおすすめします。

効能は神経痛、リウマチ、胃腸病、糖尿病、疲労回復、健康増進などで、強酸性のため殺菌力が強く、アトピーや水虫などの皮膚疾患によく効きます。

境内に建つ湯屋は無料。宿坊にも温泉が

温泉はお寺への入山料はかかりますが、温泉入浴は無料です。

「恐山菩提寺」には宿坊『吉祥閣(きっしょうかく)』があります。基本的には参拝者のため宿泊施設ですが、観光目的でも泊まれます。館内には天然温泉かけ流しの大浴場を備え、精進料理が味わえます。新しい建物で、部屋もきれいで設備等が整った宿泊施設です。翌朝には地蔵殿でのお勤めに参加できます。


恐山

問い合わせ先: むつ下北観光案内(むつ市観光協会)

電話番号:0175-23-1311

URL:http://www.mutsu-kanko.jp/

恐山菩提寺

恐山菩提寺正面

住所:青森県むつ市田名部宇曽利山3-2

電話番号:0175-22-3825

入山料:500円、小中学生200円

宿坊「吉祥閣」

電話番号:0175-22-3826

※宿泊料等は要問い合わせ

URL:https://osorezan.or.jp/

アクセス:

公共交通機関/JR大湊線下北駅から路線バスで約45分

車/青森自動車道青森東ICから約2時間、または青森空港よりレンタカーで約2時間30分