ラムネに入っているような炭酸泉、長湯温泉

長湯温泉の様子
Sponsored Link

「長湯温泉」は、“温泉県”大分県にあって別府温泉郷、由布院温泉についで人気の高い温泉です。阿蘇に連なる久住山(くじゅうざん・標高1,787m)を主峰にもつ活火山・九重連山の南東麓竹田市にあり、炭酸の泡が体を包んでくれる“ラムネ温泉”で知られています。

竹田市の景観
(画像提供:竹田市ツーリズム協会)

「長湯温泉」の泉源は50あまりあり、毎分4,500リットルもの温泉が湧いています。泉質は、炭酸ガスの含有量によって炭酸泉と炭酸水素塩泉があり、多少の違いはありますが、どの温泉でも炭酸ガスの含有量が日本有数となっています。水に含まれる炭酸ガスは、水の温度が高くなると抜けてしまう傾向がありますが、「長湯温泉」では30℃から50℃の湯温でも多くの炭酸ガスを含んでいる日本でも珍しい温泉です。

宿は町の中心を流れる芹川(せりがわ)の河岸を中心に点在していて、10数軒あります。いずれもプランによりますが、1泊素泊まり5,000円台の宿から露天風呂が付く1泊2食付き5万円ほどの部屋がある高級旅館、一日一客の宿、コテージまでバラエティに富んでいて、目的や予算によって最適な宿を選べます。

長湯温泉の様子

江戸時代には殿様用の温泉だった「長湯温泉」

「長湯温泉」は、8世紀の半ばの書物に登場することから、それより前から使われていたようですが、温泉場としての設備が整ったのは江戸時代と考えられています。江戸時代「長湯温泉」(当時は「湯原温泉」といわれていました)を統治していたのは岡藩中川家(現大分県竹田市/竹田藩ともいわれます)で、藩の御用湯として利用されていました。1700年代には藩主のための湯屋も建築されています。

「長湯温泉」の古い源泉のひとつ、『湯乃原天満社』脇にあった“湯之原湯”には1706年に藩により湯屋と茶屋が建てられました。しかし、湯屋は川岸にあったため洪水で流されてしまい、1781年には別の場所に移転します。その湯屋は“御前湯”と呼ばれていて、これも川岸にあったため何十回も流されていますが、そのたびに修理され、その源泉は現在も公衆浴場『御前湯』として残っています。

湯之原湯は後に『天満湯』として再興して最近まで営業していましたが、残念ながら廃業してしまいました。

(「湯乃原天満社」、天満湯は廃業。Google ストリートビュー)

昭和初期には由布院温泉より賑わっていた「長湯温泉」

「長湯温泉」は、江戸時代は藩の御前湯、その後大正時代までは地元中心の湯治場でした。しかし、そのラムネのような温泉に魅入られた人物がいました。九州帝国大学(現九州大学)で温泉治療学を研究していた松尾武幸(まつおたけゆき)博士と当時長湯温泉で温泉宿を経営していた御沓重徳(みくつしげのり)のふたりです。

ドイツで温泉治療学を学んだ松尾は、炭酸泉の効能を科学的に解明し、御沓は与謝野晶子・鉄幹夫妻や野口雨情、種田山頭火、北原白秋などの当時大人気の文人墨客(ぶんじんぼっかく)たちを招き、「長湯温泉」の良さを全国に知らしめる努力をしたのです。

1936年(昭和11年)に刊行された『療養本位温泉案内 関西篇』によると、当時はまだ“湯原温泉”という名称で掲載されていて、「旅館も24、5軒あり、泉質は無色透明にてやや刺激性の臭気を有する土類炭酸泉で、皮膚病を第一にして慢性胃腸病、泌尿器病、神経系の諸病、潰瘍とうに効あり(一部割愛)」と、効能が大変豊かな温泉なので、大変賑わっていたと記されています。「長湯温泉ともいう」と書かれているので、この頃から「長湯温泉」が使われ始めたようです。

糖尿病の改善効果が期待される「長湯温泉」

効能説明の付いたラムネ湯温泉

「長湯温泉」の効能は、『療養本位温泉案内 関西篇』にも書かれていたものに加え、現代では入浴で“若帰りの効果”“美肌効果”が期待でき、飲泉では“糖尿病”“慢性消化器病”“肝臓病”に効果があることが分かってきました。特に“糖尿病”に関しては、血糖値の上昇を抑える効果が実証実験上確認されています。

「長湯温泉」には多くの泉源があり、その一つひとつで少しずつ泉質が違います。もちろん炭酸ガスを含有していることは間違いないのですが、その量も少しずつ違っています。現温泉法上の泉質表示では、単純炭酸泉やマグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉、マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉などで、色は無色透明ではなく、灰褐色や緑褐色に濁っているところが多くなっています(各温泉施設の泉質や効能に関しては、長湯温泉旅館組合または長湯温泉観光案内所(道の駅ながゆ温泉内)、各温泉施設に問い合わせてください)。

川の中に自然にできた湯だまり「ガニ湯」

「長湯温泉」では、宿泊施設には温泉浴場が必ずありますが、外湯(日帰り温泉施設)が充実しているもの特徴です。

ガニ湯の様子
(画像提供:ツーリズムおおいた)

そのひとつが『ガニ湯(カニ湯)』です。『ガニ湯』は、芹川の川底から湧いていた温泉の湯アカ(含有成分)が長い年月で縁のように円形に積もり、その中に温泉が満たされたという珍しい温泉です。現在はいつでも入れるように川岸が固められ、湯船も補修されています。湯船はひとつで混浴。囲いも脱衣場もなく女性にとってはかなり勇気のいる温泉ですが、水着の着用は認められています。泉質は炭酸水素塩泉です。

ガニ湯を近くから見た画像

ガニ湯(カニ湯)

住所:大分県竹田市直入町長湯

電話番号:0974-75-2211(竹田市役所直入支所)

入湯料:無料

定休日:年中無休

殿様の御前湯を受け継いだ日帰り温泉施設「御前湯」

御前湯の様子
(画像提供:ツーリズムおおいた)

『御前湯』は、江戸時代にあった殿様の御前湯を受け継いだ日帰り温泉施設です。源泉は3本あり、泉温は約30℃から約45℃と異なっていますが、泉質はいずれもマグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉です。浴場は1階と3階に違う源泉を使用した大浴場や露天風呂があり、家族風呂やサウナ、無料の休憩室、喫茶ルームなども設備されています。温泉は飲むことも可能です。

御前館の外観
(画像提供:ツーリズムおおいた)

長湯温泉療養文化館「御前湯」

住所:大分県竹田市直入町長湯7962-1

電話番号:0974-64-1400

営業時間:6:00~21:00(受付は20:00まで)

入浴料:おとな 500円、こども(小学生) 200円、6歳未満 無料(竹田市民はおとな 300円、こども 200円)

定休日:第3水曜日

URL:http://www.gozenyu.com/

無人の公衆浴場「長生湯」

長生湯の浴場内
(画像提供:竹田市ツーリズム協会)

『長生湯』は、男女別に内湯のみがある無人の公衆浴場です。入口で回転ドアの料金口に入湯料200円を入れ、ドアを回転させて中に入ります。建物は新しく、湯船もきれいです。泉質は炭酸水素塩泉で、地元の人たちに愛されている温泉です。

長生湯の施設内
(画像提供:竹田市ツーリズム協会)

長生湯

住所:大分県竹田市直入町長湯7993-3

電話番号:0974-64-1400(御前湯)

営業時間:6:00~22:00

入湯料:200円

定休日:第4水曜

炭酸含有量が最も多い「ラムネ温泉館」

ラムネ温泉館の浴場内
(画像提供:ツーリズムおおいた)

『ラムネ温泉館』は、泉質、泉温の違う2種類の温泉を楽しめる日帰り温泉施設です。ひとつはラムネ温泉といわれる32℃の単純炭酸泉で、泉温そのままの温泉が外湯(露天風呂)で楽しめます。32℃は最初かなり冷たいと感じますが、入っているとポカポカしてきて快適です。炭酸ガスの含有量が多いので、まるで炭酸水の中に入ったように気泡がまとわりつきます。

炭酸水素塩泉の方は、泡はそれほど多くはありませんが、42℃あるのでちょうどいい温度です。ラムネ温泉の後に入ると、体の芯からじわーっと温めてくれます。両方の温泉を交互に入るのが健康増進に良いようです。飲泉もできます。

湯船は男女別に内湯(42℃)と外湯(32℃)があり、ほかに3つの家族風呂、サウナ、待合室などが設備されています。家族風呂にもおのおのに2種類の湯船があります。

『ラムネ温泉館』は、「長湯温泉」きっての老舗旅館『大丸旅館』に併設されている日帰り温泉施設で、『大丸旅館』宿泊者は無料で利用できます。

ラムネ温泉大丸旅館の外観
(画像提供:ツーリズムおおいた)

ラムネ温泉館

住所:大分県竹田市直入町大字長湯7676-2

電話番号:0974-75-2620

営業時間:10:00~22:00

休業日:毎月第1水曜日(1月と5月は第2水曜日)

URL:https://lamune-onsen.co.jp/

大丸旅館

URL: http://www.daimaruhello-net.co.jp/

水着で楽しめるクアハウス「クアパーク長湯」

クアパーク長湯の夜の様子
(画像提供:クアパーク長湯)

『クアパーク長湯』は、大浴場のほか露天風呂、歩行湯、寝湯、ジャクジー、サウナ、飲泉場、レストラン、宿泊棟などを備えた2019年開業の総合温泉施設で、廃業した国民宿舎 直入荘の跡地に建設されたものです。川沿いのオープンな大自然の中で、一日中温泉を堪能できます。歩行湯、寝湯、露天風呂などは水着着用が必須です。評価の高かった直入荘の源泉をそのまま使っています。

クアパーク長湯の昼の様子
(画像提供:クアパーク長湯)

クアパーク長湯

住所:大分県竹田市直入町長湯3041-1

電話番号:0120-381-126

営業時間:

バーデゾーン/10:00~20:30(最終受付20:00)※水着着用

内湯/10:00~21:30(最終受付21:00)(水着なし)

入館料:おとな 800円、小学生 400円、水着レンタル 500円

定休日:不定休

URL:https://www.kur-nagayu.co.jp/

ミネラル水、どぶろくも「長湯温泉」の名物

「長湯温泉」は飲泉を推奨していますが、宿や日帰り温泉施設のほかに温泉街に数カ所の飲泉場を設けています。ヨーロッパの飲泉場を模した「飲泉場コロナダ」をはじめ2021年現在、3カ所が利用できます。

温泉水は「長湯温泉マグナ300」「長湯温泉マグナ1800」として販売されています。「マグナ300」は温泉と名水百選に選ばれている“竹田湧水群”の湧き水をブレンドしたもので、マグネシウムやカルシウムが豊富に含まれた健康飲料水です。「マグナ1800」は、温泉水を精製して飲みやすく、保存が利くようにしたもので、飲むだけでなく、料理の味わいを深めてくれます。

ミネラル水「マグナ300」
ミネラル水「マグナ1800」

また、竹田市はどぶろく特区として、どぶろくの製造が認められています。宿泊施設『森の宿泊リストランテ サリモス』で製造されるどぶろくは、竹田市のふるさと納税返礼品にもなっていて、「長湯温泉」の隠れた名物になっています。

どぶろくの画像

基本情報

長湯温泉

住所:大分県竹田市直入町長湯

問い合わせ先:長湯温泉観光案内所(道の駅ながゆ温泉内)

電話番号:0974-75-3111

アクセス:

公共交通機関/JR豊肥本線豊後竹田駅から路線バスで約45分

車/大分自動車道由布院ICから約35kmほか

地図:https://goo.gl/maps/BRr8v73NKpFsWs2Z8

脚注1:どぶろく

アルコール発酵によってできた醪(もろみ)を酒袋などに入れ、圧力をかけて搾っていくのですが、ここで目の粗い酒袋を使うことで醪の中の溶けきれていない米の固体部分が原酒の中に残ります。これが白濁のもとになるのです。

酒税法上、この「醪を固体と液体にわける」工程を経なければ、「清酒」を名乗ることはできません。この工程をせずに販売に出されるものを「どぶろく」と呼ぶ場合が多いのです。この場合は清酒ではなく、「その他醸造酒」という扱いになります。

参照:SAKETIMES

【まとめ】日本酒ビギナー必見!これだけは覚えておきたい「日本酒専門用語」記事5選! | 日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」
「日本酒に詳しくなりたい!でもなにから覚えれば・・・」 「日本酒専門店に行きたいけど敷居が高そうだな・・・」